【農の参考】農業のマーケティング教科書-食と農のおいしいつなぎかた
「21世紀は『競争のマーケティング』の時代ではなく、
『共生のマーケティング』の時代である。」
- はじめに
- 第1章ー農業を再定義しよう(読む必要なし)
- 第2章ー農業にマーケティング発想を
- 第3章ー品質を決めるのは消費者である
- 第4章―うまくいっている農家の特徴
- 第5章ーどうやって強いブランドを作るのか
- 第6章ー「違い」が価値になる
- 第7章ーどうすれば六次産業化は成功するのか
- 第8章ー農業の体験価値を伝えよう
- 第9章ーさぁ前に踏み出そう
- おわりに
はじめに
消費者は「食べるモノ」ではなく「食べるコト」を買う。
消費者は農産物を買うのではなく、「おいしさ」を買っている。
消費者の関心は、農産物そのものでなく、その商品が自分にとってどのような価値があるのか、である。
売り込まれて買いたくなる人はいない。
誰かが自分を説得しようとしていると感じると、人は無意識に身構えてしまう。
21世紀の農業で大切なのは、押す力(売り込み)ではなく、消費者を引き付ける「引く力」である。
21世紀の農業は、農産物を作って終わりではなく、農産物の引力を高め、消費者を引き付け、「食」と「農」をつなぐことである。
キーワードは「マーケティング」だ。
第1章ー農業を再定義しよう(読む必要なし)
※農業と幸福度の関連性を述べているだけの章。
関連性はこじつけとしか思えず、掲載されているデータも関連性を裏付ているとは言えない。筆者が思っていることをそれっぽく思わせるためにデータを載せて解説している感じで読む価値は極めて薄い。
なお、本書後半では幸せうんぬんはまったく出てこないので、第1章の存在意義も不明。
第2章ー農業にマーケティング発想を
「 農業のマーケティングとは、農と食を繋ぎ顧客を生み出す活動である。」
消費者が買っているのは「モノ」ではなく「価値」というのが、マーケティングの発想。
消費者が価値を感じるのは、農産物・食物という食べるモノではなく、美味しい食事・食卓という「食べるコト」。
顧客と同じ方向を向こう
販売とマーケティングは一見似ているようだが、その発想は正反対である。
販売=「食べてください」は、起点が農作物や生産者であり、消費者起点でない。
マーケティングにおいて大切なのは「消費者目線」「生活者目線」で考えることであり、生産者と消費者が同じ方向を見ることである。
マーケティング志向の農業に欠かせない3つの力
- 顧客の心や生活を想像する力=想像力
- 顧客の気持ちを感じる力=共感力
- 顧客の 一歩先を行き、消費者が買いたくなるコトを提案する力=提案力
消費者目線になるのは難しい
トマト+A=満足
Aには何が入るか?というアンケート結果では、生産者と消費者の答えに差異があった。
生産者 | 消費者 |
---|---|
おいしさ | チーズ |
品質 | パスタ |
うま味 | 塩 |
生産者は「トマトという農産物(モノ)」を見ており、消費者の「トマトのある食事(コト)」という目線になれていない。
強制的に消費者目線に変える方法
- 「売る」をNGにし、「買う」と言い換える
「売り込み」、「売る」という言葉を禁句にし、「買いたくなる」「買う」という言葉を使うようにする。 - 「何」ではなく「なぜ」で発想する
「何」を売るのかではなく、「なぜ」買うのかを考える。 - 食べるモノではなく、食べるコトをイメージする
- 「農産物を作る」ではなく「顧客を作る」と考える
- 自分の生産物を自腹で買ってみる
考察・感想
農業にマーケティングの発想、つまり「顧客ニーズをしっかりとらえよう」が必要であり、消費者目線について書かれた内容。個人的に当たり前だと思うが、理解できてない人が多いのも事実だと思う。自分たちが買い物をする際、販売者に言われたから買っているという人はほとんどいないと思う。つまり自分たちが消費者でもあるにも関わらず消費者目線になれていない。そういう人にとってはそれを教えるという意味で良い内容だと思う。
一方、理解している人には「農業にもあてはまるよ」と再認識させてくれるという意味で意義のある内容だと思う。
個人的には「消費者はおいしいというコトを買っている」という考えは新鮮で勉強になった。
第3章ー品質を決めるのは消費者である
品評会で最高品質と評価された商品が、消費者に支持されるとは限らない。逆に、品評会では評価されなかった商品が売れたりもする。
品質を上げようと努力を続けて来て、生産者の自己満足度は上がったとしても、顧客満足度は上がっていない可能性がある。
おいしさ=五感×頭×心
人は味覚だけでなく、五感全体で味わっている。
舌で味わう美味しさもあれば、目、鼻、耳、触感のおいしさがある。加えて、食に関する知識、口コミ情報、ブランド・イメージなどの「頭」にある様々な情報は美味しさに影響をもたらす。
家庭料理など、「心」が込められた料理はよりおいしく感じるはず。逆に、病院食などはそれだけで「おいしくなさそう」と見られる。
農産物だけを見ても、「おいしさ」の提供は難しい。
知覚品質をいかに高めるか
①「ブランド」で知覚品質が高まる
例えば、同じイチゴでも「イチゴ」と「あまおう」に表記をわけると、「あまおう」の方が支払許容価格が増す。
②「見える化」で知覚品質が高まる
「おいしそう」という言葉からわかるように、食べる時は見てから食べる。
農業のマーケティングは「視覚より、味覚」ではなく、「視覚も味覚も」大切なのである。
おいしい=美+味
おいしさは目に見えない。
味には形がない。
目に見えないと、人は不安を感じる。
だから、消費者はおいしさを見たいのである。
パッケージ、リーフレット、パンフレット、POP、Webサイトのトップページ、ラベルなど、消費者の目に入るものすべてが知覚品質に影響する。
文字のフォントでも「知覚品質」は変化する。
以下は、「どのようなイチゴに高級感を感じる」かのアンケートの結果である。
8位までが全て視覚に関するものである。
上位10位 | キーワード |
---|---|
1 | 艶・鮮やか |
2 | 粒 |
3 | 真っ赤 |
4 | 大きい |
5 | 大粒 |
6 | 赤い |
7 | 濃い・濃厚 |
8 | きれい |
9 | 甘い |
10 | 新鮮 |
(岩崎研究室・静岡県農林技術研究所調査・2014年1月)
人は見える物を通して、見えない「品質」や「おいしさ」を推測する。
③「言える化」で知覚品質が高まる
知覚品質を高めるためにはおいしさの表現力も大切である。
単に「高品質」「おいしい」と聞いただけでは具体的なイメージが浮かばない。イメージが浮かばなければ消費者の気持ちは動きにくい。
「言える化」の効果は男女で異なる。
男は「高品質」など名詞に反応しやすく、女性は「シャキシャキ」「ぷりぷり」など形容詞に反応しやすい。
効果的な言える化には、男女差も考慮していくことが必要であろう。
④「物語」で知覚品質が高まる
農産物に消費者の共感を生むストーリーがあると、知覚品質の向上が期待できる。
(例)
「リンゴ一筋30年の農家、青森県津軽平野の山田さんにお願いして、樹上甘熟リンゴを使い、ゆっくりと時間をかけ、手作りで仕上げました。」
⑤「セット」で知覚品質が高まる
「何と一緒に売るのか」でも知覚品質は高まる。
⑥「陳列」で知覚品質が高まる
ボリューム陳列:ばらばらに少量陳列するよりも、大量に陳列した方が買いたい気持ちが喚起される。
⑦「価格」で知覚品質が高まる
同じ品質であっても、高い物の方がおいしいと答える人が多い。
特に、ワインやお茶など嗜好性のある商品、健康食品など消費者の品質判断力が弱い商品、贈答分野などの商品にこの傾向がみられる。
「安くすれば売れる」は短絡的。
顧客が求めるのは「安い価格」ではなく、「高い価値」なのである。
第4章―うまくいっている農家の特徴
好業績に影響する要因
- 消費者と交流している
- 消費者の声を聞いている
- 価格競争に巻き込まれにくい
- 安定的な販売先を確保できている
- シンボルとなる商品がある
- 女性の力を積極的に活用している
一方マイナス要因は
「農産物を収穫するところまでが私の主な仕事である。」だった。
①消費者と交流している・声を聞いている
生産者:消費者の目線を実感できる。また、「おいしかった」などの感想を聞くことでモチベーションが高まる。
消費者:生産者の農産物のブランド・イメージが刻まれる。その商品に対する購買意欲も喚起される。
②価格競争に巻き込まれにくい
好業績な農業者からは
「価格決定に関わることができる」
「自分で価格を決められる」
と言った言葉を聞くことが多い。
「価格の安さ以外の魅力で消費者を引き付けている。」ということである。
なぜ価格競争に巻き込まれにくいのか
- 競合が少ないー同じ地域に同じものを扱っている業者が少ない
- 消費者との信頼関係
- 地域性ー他の地域では同じものが作りにくい
- 直販・販路の確保ー「販路がしっかりしている」「直売所で直接販売している」
- 独自性ー栽培技術、ニッチな作物を扱っている
- 品質の高さー指名買いが多く、高めの価格設定でも販売できる
- ブランド力ーブランド化に成功している
③安定的な販売先を確保できている
農業者にとって、どうしたら流通や飲食店に求められるかといった視点も欠かせない。
販路について、他人任せにせず、生産者自身が直接または間接的に関与していくことが大切なのである。
④シンボルとなる商品がある
平均的な商品をたくさん有するより、1つでも明らかに優れた商品を作ることが効果的。
何かが突出して優れていれば、他の面でも優れているとみなされやすい(ハロー効果)。
「A(自社名)と言えば、B(商品名)である。」
このBに当てはまるものが自分と顧客で違っていれば要注意かもしれない。
⑤女性の力を積極的に活用している(読む必要なし)
※なぜ女性の力を活用していると業績に好影響を与えるのか、理由や根拠なし。
⑥「農産物を収穫するところまでが主な仕事」と考えていない
優れた農業者は生産とマーケティング戦略の両方に通じ、かつそれを有機的につなぐことができている。
第5章ーどうやって強いブランドを作るのか
「ブランド化とは何ですか?」
価格や品質など、すべての要素が同一であるが、名前が違う。
例えば、香川と神奈川、のうどんであれば、9割以上の人が「香川のうどん」を選ぶ。
まったく同じ品質であっても、選ばれるものと選ばれないものという差ができる。
ブランドは「品質」や「価格」を超えたものである。
選ばれるのは、強いブランドだ。
かと言って、品質そのものが低ければ、いくら努力してもブランドにはならない。
ブランド力を評価する方法
「~らしさ」と付けた時に、イメージが浮かぶか。
例)京都らしさ、北海道らしさと言えば歴史的な街並み、大自然などそのらしさがイメージできる。
埼玉などは何も浮かばない
ブランドに関する誤解
- 知名度を高めれば、ブランドになる。
:知っているからと言って、買いたくなるわけではない。 - 品質を高めれば、ブランドはできる。
:品質の良い農産物は日本にたくさんある。品質が低ければブランド化は難しいが、高ければできるというわけではない。 - 広告宣伝費がないと、ブランドはできない。
:強いブランドは、広告よりも「口コミ」や「メディア」で生まれるケースが圧倒的に多い。 - ロゴを先に作る
:ブランド・アイデンティティをシンボル化した物がロゴである。 - 数の多さを売りにする。
:買い手がイメージを浮かべられない。イメージが浮かばなければ選ばれない。
強いブランドに共通する6つの特性
- ブランド・イメージが明快である。
:聞いた時にイメージが浮かばなければ選ばれない。「明快なブランド・イメージ」を作るためには、ブランドの理想の姿(ブランド・アイデンティティ)を明確化する。 - 心に訴える農産物を作る。
:健康など顧客の理性に訴えるだけでなく、ネーミング、パッケージ、デザイン、言葉、ディスプレイ、接客など感性に訴えることも欠かせない。 - 独自性がある。
:既に世の中にある物はブランドにはならない。生みの苦しみがあり他に真似されないからこそブランドとなる。ブランドづくりに成功するには「過去に例がないから」「大変だから」やらないのではなく、だからこそ挑戦するという発想が欠かせない。 - 価格以外の魅力がある。
:価格で引き付けた顧客は価格で逃げていく。 - 情報発生力がある。
:メディアが取り上げやすい、取り上げたくなるものを考え、積極的にメディアに情報提供してくことが有効。 - 口コミ発生力がある。
:口コミは自分で宣伝するより効果的である。口コミ発生を促進する1つ目の条件は「伝えやすい」であり、2つ目は「伝えたくなる」である。
「ブランド名が短く、覚えやすい。」
「特徴が絞り込まれていて言語化しやすい。」
「語るための材料がある。」
「個性が明快であり文章にしやすい。」
「満足度が高い。」
「ユニークなもの」など
第6章ー「違い」が価値になる
「普通」は価値にならない。
消費者に選ばれるブランドになるには、個性、独自性が欠かせない。
何かしら他とは違う「尖り」を見出していく必要がある。
個性化は「特殊化」ではない
既存商品と100%違う特殊な商品を作る必要はない。
個性はわずかな違いからでも生まれる。
わずかな違いでも消費者に明確に伝われば大きな個性となる。
「二番煎じ」はブランドにならない
他社の成功事例に目が向きがちであり、それを真似したくなる。
しかし、ブランドづくりで大切なものは足元にある。
先進地の視察をするなら、次の発想が必要だろう。
- 成功の背景にある目には見えない本質を探る。
- 先進地に出来なくて自分にできることは何かを探る。
- 成功事例の逆をいく方法を考える。
危険な「ヨコ展開」という発想
ヨコ展開はブランドづくりと相いれない。
「ヨコ展開」できるということは真似されやすいという事である。
ブランドづくりと相性が良いのは以下の言葉である。
- 手間がかかる
- 苦労する
- 面倒だ
- 効率が悪い
- 大変だ
ブランドづくりに大切なのは如何に「ヨコ展開されないか」である。
いかに個性を出すか
- 「味覚、香り、触感」
- 「形状」
格好の悪さも特徴になる。 - 「サイズ」
市場の規格より大きくても小さくても特徴になる。 - 「色」
- 「パッケージ」
- 「生産方法・栽培方法」
- 「肥料・エサ」
- 「品質基準」
農産物は品質がばらつきやすい。独自の「品質基準」を設けることによって他の商品との違いを生み出し、ブランドへの信頼を得ることが可能である。例えば「アメーラトマト」などは厳しい糖度基準を設け、それを満たした商品のみそのブランドを名乗れるようにしている。 - 「生産場所」
旬の時期はライバルも多く、生産量も多いので単価も下がりがちである。収穫時期をずらすことができれば個性や収益力を高めることができる。 - 「ずらし」
- 「ストーリー」
消費者の共感を生むストーリーは、商品の「知覚品質」を高める力を有している。生産者や農産物の生産にかかわるエピソード、産地にかかわる物語などがあるはず。 - 「利用シーン」
既存の用途以外の、新たな利用シーンを積極的に創造し、消費者に提案していく。 - 「用途の限定」
「卵かけごはん用の醤油」など、あえて用途を限定することで売り上げが伸びる場合がある。用途を絞ることによって利用シーンが明確になり、購買意欲が喚起されやすくなる。 - 「売る場所」
既存とは異なる販売チャネルを活用することによって個性的な商品が生まれる。 - 「逆張り」
皆と同じ方向に進んでいてもなかなか個性は生まれにくい。「ケーキ向けの緑茶」など「逆張り」から強力な個性は生まれる。
ダメな違いの出し方
- 「一本の物差し」で測ることができる。
価格や量などだけなど、一つの要素だけで価値を測れる程度の違いは出さない。それらは競争になりやすく、大手に簡単につぶされる。「複数の物差し」がある分野では、単純な勝ち負けにならないので共存が可能。
例えば、「味」や「デザイン」などには「一本の物差し」は存在しない。こういった分野で企業が個性を発揮することは競争ではなく、共生につながるはずだ。 - 消費者が気づかない違い。
- 消費者にとって価値がない違い。
第7章ーどうすれば六次産業化は成功するのか
六次産業化に成功するためには、既存商品の良さを見つけ、それを磨くことが大切。
新商品を増やす前に、今ある商品の価値をいかに高めるのかを考えてみよう。
農業者の商品開発においては、加工食品業者と「土俵を変える」ことが欠かせない。
六次産業化に関する誤解
規格外品の利用目的の六次産業化は「目的」を間違えている。
規格外品の利用は、顧客にとって「買う理由」にならない。
六次産業化=新商品開発ではない。
大切なのは、いくつ新しい商品を開発したのかではなく、「新しい価値」をどれだけ生み出したのか、その商品は「新しい顧客」を創造したのか、「リピーター」を生んでいるか、である。
六次産業化で生まれた商品が売れないと、次々と新商品を足し算していくケースが 多いが、新商品を足せば足すほど既存商品の個性は薄まっていく。既存商品が売れないから新商品開発と言う発想は危険。売れないのは、その商品の「魅力が買い手に伝わっていない」のかもしれない。
六次産業化成功の3つのポイント
- 独自性がある
- 販売チャネルの確保
- 高品質・安心安全
ロングセラー商品を生み出すポイント
商品開発においてはいかにリピーターを確保するかが重要になっている。
- おいしすぎない
「おいしすぎる」の一歩手前、「もう一度食べたい」と思われる飽きられない味を目指す。ロングセラー商品とは人々に好かれる「最好品質」である。 - 「変わらないもの」と「変わるもの」のバランス
定番となる変わらない商品と、それを飽きさせない期間・地域などの様々な変わる商品をバランス良く出す。 - 近視眼にならない
「ブーム」など、需要が高騰したからといって、生産も一気に増やすべきではない。「ブーム」と呼ばれたら喜ばずに、逆に気を付けるべき。一気に量を増やすのではなく、常に磨き続けることがロングセラーになるポイント。
第8章ー農業の体験価値を伝えよう
コトの中に農産物を位置づける
経済が成熟化すればするほど、人は「形あるモノ」ではなく、「形のないコト」に価値を見出すようになる。
IT化が進めば進むほど、逆にリアルでアナログな「体験」の価値も高まる。
農業においても、農産物を「食べる」だけでなく、農に関する「体験」が価値を持つようになっている。
生産活動だけで農業が成長し発展していくことは難しい時代が来ている。
21世紀の農業は「コト」の中に「農産物」を位置づけるという発想が求められている。
消費地に行くより、産地に来てもらおう
消費地に販売促進に行くよりも、産地に来た人に、地域の美味しい農産物に出会ってもらった方が効果的だ。
<体験によって生まれる効果>
- 愛着向上効果
- ブランド・イメージ向上効果
- 需要促進効果
- 口コミ促進効果
「農業」と「観光」を掛け算しよう
農業と観光は極めて親和性が高い。
現代の農業には、「地域の農産物を売る」と言う発想だけでなく、「農産物のある地域を売る」という発想が求められている。
名所史跡への観光は一度行けば「もう行った」となるが、産地への観光は「また行きたい、食べたい、(生産者に)会いたい」とリピートが期待できる。
農村観光に惹かれる人々はどのような特性を持つのか
- 現地の人々との出会い・交流
- 自然
- 学び
- 体験
- その地域ならではの商品や食
農家レストランのメリット
- 生産意欲喚起
顧客が喜ぶ姿が見える。 - 消費者ニーズ把握
顧客の声を聞くことができる。 - 情報発信
農産物について、直接消費者に伝えることができる。 - 口コミ発生
- 付加価値向上
加工によって、付加価値が向上する。 - 素材の有効活用
農産物が無駄なく有効に利用できる。 - 農産物売上向上
試食効果がある。 - ブランド力向上
体験によるブランド・イメージの向上
農家レストランにひかれる人々の特徴
- 小規模店志向
- 健康志向
- 食の口コミ発信源となる。
- グルメ志向
- 環境志向
- リピート志向
農家レストランにおけるマーケティングのポイント
何よりも大切なことは、消費者が農家のレストランに何を期待しているのかを理解し、それに応えていくことである。
- 軸はあくまでも農業
「農家にしかできないこと」で勝負するという発想を欠かさない。 - メニューを安易に増やさない
- 核となる商品を作る
「Aレストランと言えばB、Bと言えばAレストラン」と言われるようなシンボルメニューを提供しよう。 - ライブ感を大事にする
「とれたて感」「できたて感」「対面のコミュニケーション」といったライブ感も重要。 - 「飽きない」を意識する。
経営の継続のためにはリピーターの確保が重要であり、そのためにはまた食べたい味、飽きない味の提供がポイントになる。
第9章ーさぁ前に踏み出そう
やる気×やり方×継続力=マーケティング効果
マーケティング失敗を招く4つの誤解
- ~離れだから厳しいという誤解
不振の原因が消費者側にあるという考え方。
業績=外的要因×自分のやり方(内的要因)
不振の原因を外的要因のせいにする前に、自らのやり方に問題がないか考えよう。打てない理由をピッチャーのせいにするバッターはいない。 - 後継者がいないから厳しいという誤解
後継者がいないから不振なのではなく、不振だから後継者ができない。 - 規模が小さい、競争力がないという誤解
20世紀から21世紀への消費者ニーズの変容は
画一性→個性
量→質
総合→専門性
無難→本物
効率性→感性
全国→地域
であり、いずれも大規模であれば優位になるものではない。
大規模農業には「"大"の方向性」があり、小規模農業には「"小"の方向性」がある。 - 経営改善をすれば強くなれるという誤解
改善=短所に着目する発想。マーケティングの成果を上げるためには、長所を見つけそれを伸ばす方がはるかに有益である。「短所」は個性にもなるし、視点を変えれば「強み」にもなる。また、農産物の長所短所を決めるのは生産者ではなく消費者であるため、生産者の視点だけで決めつけてしまう事には気を付けよう。
さぁ行動しよう
次の質問を自分に問いかけよう
- 「進化」しているか?
(少しでも前に進んでいるか) - 「深化」しているか?
(少しでも深くなっているか) - 「新化」しているか?
(少しでも新しい何かを生み出しているか)
大切なのは、瞬発力ではなく継続力。
例え、小さなチャレンジでも、その積み重ねが大きな進化につながる。
さぁ前に踏み出そう!
おわりに
成果をあげる3つの発想
前向きにチャレンジし、成果をあげている農家の特長
- 機会を生かす
- 自助努力・創意工夫
- 発想転換
この3つの発想があれば、どのような時代になっても前向きな行動につなげることができるはず。